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「日向守の日頃を、常識の人、知性の人とみるときは、欠けるところのない教養をそなえ、織田どのの一将としてほとんど非の打ち所もない。またよく天下の人心を察知し、信長公がこれまでやって来た統業の功罪をひそかに批判し、それを称たたえる者も多い半面には、その犠牲となった者や、うらむ者も世にはたくさんある点を冷静に算出して、その数を味方なりと考え、この時期において、公を弑逆しいぎゃくするの機をとらえた彼の頭のはたらきは、まことに賢いものだというほかはない。……しかしじゃな。ひるがえって、その野望が成るものか、成らぬものか。旗上げの名分をどう称となえる気か。彼は、その名分も理論で捏こね上げられるものと思っておるらしいが。……ばかな。たれが、そんなややこしい理論構説こうせつに耳をかそう。名分とは、民の直情に合致するものだ。大義とは、民のなかに持っている鉄則の信条じゃ。この標的まとを外はずしては、戦いくさも政治もうまく運ぶわけはない。かりそめにも、逆と呼ばれる旗を持っては、たとえ、日向守がどれほど努力しようと、もうこの先は見えすいておる」
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