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『北越奇談ほくえつきだん』に、「神田村に鬼新左衛門と云ふ者あり。殺生せつしようを好む。村の十余町奥なる山神社の下の渓流に水鳥多し。里人は相戒めて之を捕りに行くことなかりしを此男一人雪の中を行き、もち繩なわを流して鳥を取ること甚だ多し。一夜又行きしも少しも獲物無きことあり。暁あかつきに及び、何者とも知れず氷りたる雪の上を歩む音あり。新左衛門小屋の中より之を窺うかがふに、長たけ一丈余りの男髪は垂れて眼を蔽へり。新左衛門のすくみ居たるを、小屋の外より箕みの如き手を出して攫つかみ上げ、遙かに投げ飛ばしたりと思へば気絶す。翌朝女房より村長に訴へて谷々を捜せしに、谷二つ隔てゝ北の方に新左の雪中に倒れたるを見付けたり。其後生き返り殺生は止めたれど、三年ばかりにして死したりと云ふ。深山の奇測り難し。」
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